矯正歯科
矯正治療の具体的な手順、治療にかかる費用、各患者さんに合った方法で治療をすすめる
矯正治療を始めるにあたって、まず診療所を訪れて専門医に相談します。
この時点でかかる費用は各医院によって異なり、無料で行っているところもありますが、あまり高額ではないのがー般的です。
治療を受けることを決定したら、検査を行います。
内容は患者さんへの問診 (このとき、気になっていることや希望を伝えます)
口腔内診査、レントゲン検査、模型診査等のー般検査のほか、必要に応じて筋電図や鼻腔抵抗、唾液、 血液、尿検査、咬合力検査等を行います。
この検査に基づいて診断した後に、治療方法を立てます。
検査後の来院時に患者さんは治療方法の説明を受け、費用についても知らされます。
この時点で疑問や要望、卒業や結婚式などの予定について伝えておくと良いでしょう。医師の方で、それを配慮した治療が進められます。
検査料は各診療所で検査項目が異なることから、数千円から数万円とー定していません。相談の時に聞いておくと良いでしょう。
また診断料も、検査料に含めて考える先生や、検査を行ったということは、すでに治療を前提としているので、治療費に含めて考える医師もいます。
患者さんが治療方針や費用について納得されると、治療が始まります。
治療が始まったら最後までやり通してください。途中で終わるのはもったいないことですし、結果が中途半端でかえってやらなかった方が良かったということになりかねません。
治療にかかる費用は各症状により変わってきます。
乳歯列(子供の歯)で骨格的な治療から入ったり、永久歯がキレイに生えるように拡大する治療もあります。
拡大することによって、必ず歯を抜かないで治療することができるわけではありませんが、乳歯列期に叢生が予想される場合でも、乳歯列期に治療することで 歯を抜かないで治療が進められた例もあります。こうした乳歯列期や、前歯と6歳臼歯のみ永久歯が生えている時期の治療費については、その部分を独立して考える場合と、後に永久歯萌出後に全部の歯をきれいに並べる治療も含めてトータルに考える場合があります。その場合、分納分として費用がかかります。
永久歯列での治療は、全部の歯に装置を付けて治療するのがー般的ですが、その費用は診療所の立地条件や先生の経験、実績により様々です。
おおよそ一般的には100万円前後と考えれば良いと思います。地方ではそれよりも安いですし、高名な先生はその限りではありません。
装置を付けてからは、月に1回程度の調整を行います。調整料は数千円程度がー般的ですが、装置料に全部の費用を含めて考える場合もあります。
この場合は調整料はかかりません。治療が終わり装置がはずされても、歯が移動した位置に定着するまでには、その後2~3年を要します。その間には、固定式または着脱式の装置を付け、3ケ月に1回程度のメンテナンスが必要となります。
例えば3歳くらいの反対咬合の子供の場合、骨格性の反対咬合が診断されても治療に入るかどうかは、保護者の考え、子供の性格によって決まります。
今はできなくても、永久前歯に生え替わる7歳頃に始めることもできますし、アゴが出ているのも治したいということなら成長が終わってから手術も含めた治療をおすすめしたいと思います。
治療方法はひとつではありません。何が気になっているか、どうしたいかをしっかり伝えてください。その希望に沿った治療を進めていきます。
出っ歯の治療
ここでは、「出っ歯」(上顎突出、または両顎突出)および「八重歯」 (叢生)の治療についてお話しましょう。
「出っ歯」についてですが、「出っ歯」は上の歯が出ている場合と、上の歯と下の歯の両方が出ている場合があります。
また、歯だけが出ている場合と、顎そのものが出ている場合もあります。
それぞれについて治療は異なります。患者さんの年令によっても治療法は異なってきます。
上の歯が出ている場合は噛み合せが深く、顎も出ていることが多いのですが、その場合には患者さんがまだ子供であれば、いきなり出ている前歯を内側に入れるようなことはあまりしません。
まだ成長の力を治療に利用することができるからです。
バイオネーターやヘッドギアーを使用して顎の位置を適正な関係に近づけます。
バイオネ-ターは下の顎が後ろに退がっているのを前に移動させ下の顎の成長を促進することで、上の顎と下の顎の関係を改善させます。
ヘッドギアーは主に上の顎が出ているのであって、下の顎はあまり後ろに退かれていない場合に用いられます。
上の顎の成長を抑制することで相対的に上の顎と下の顎の関係を適正な関係に近づけます。その後、大人の歯に生え変わったところで、まだ、歯が出ているかどうか評価します。ここからは大人の治療と同じです。歯が出ている場合には、歯を抜く必要があるかどうかを検討します。前歯を後ろに移動する量が大きければ歯を抜きます。移動する量が小さければ抜かないで治療をします。このような治療は歯に直接装置をつけます。
- バイオネーター
- 矯正装置のー種で、アゴの前後的な位置関係の改善や、幅の拡大などを行う。
- ヘッドギア
- 上顎の成長をコントロールする矯正装置。口から出ている太い針金は上顎の奥の歯につけた装置につながっていて、バネで上顎そのものを後方へ引く。また、上顎にある奥歯が前に来るのを防ぐためにも使用する。
八重歯の治療
「八重歯」の治療ですが、歯の重なり具合や患者さんの年令によって治療の方法は異なります。まだ 全部の歯が大人の歯に生え変わっていない場合には、顎の大きさの成長を促進させる治療をします。顎を拡大する方法はいろいろあります。その中のひとつに、自分で出し入れをするタイプのものがあります。
軽度の「でこぼこ」の治療に使われます。この装置は先ほどの「出っ歯」の治療にも使うこともあります。
顎の関係は適正で、歯だけが出ている場合です。顎の幅が狭いために前歯が 押し出されてしまっているような場合です。
この患者さんの場合には拡大させる装置を、主に夜寝ている間、上下とも装着し、前歯のみ歯に直接つける矯正装置(プラケット)で治療しています。患者さんにかかる員担が少ない治療です。
成長の終わった大人については、「でこぼこ」の大きさによって歯を抜くか抜かないか、また、どの部位を抜くのかを決めます。
「でこぼこ」のために奥歯を噛み合せても前歯が開いてしまう場合もあります。
その場合も歯を抜いて治療することがあります。
歯を抜いた後は、歯に直接つける矯正装置で治療をしていきます。
歯を抜く場合でも抜いた跡は残りません。
ここに紹介した治療はほんのー例にすぎません。
その人その人の現状と希望するゴールにより様々な方法があります。
大きな「でこぼこ」や「出っ歯」を治すために、歯を抜くかわりに奥歯をもっと奥に移動させる場合もあります。
直接つける矯正装置(プラケット) もセラミックなど目立たない装置もありますし、歯の後ろ側(舌側矯正) からつける場合もあります。
装置の種類は色々ですが、基本的な考え方はわかっていただけたのではないでしょうか。
あなたの症状にあった治療法もきっと見つかると思います。
先生により治療法は異なってきます。
どのようにしたいのかといった要望を具体的に先生に示すことが適切な治療を受ける鍵になると思います。
(解説:いさはい歯科医院高崎オフィス 砂盃亨子院長)